漢方薬局薬剤師日録(7) 平成18年1月1日〜3月31日

漢方と漢方薬の真実>>漢方薬局薬剤師日録(7)

平成18年
1月1日(日曜日)とうとう新しい年を迎えてしまった。本年も漢方と漢方薬を中心に医薬品あるいは健康食品などの問題も交えて、様々な考察を続けたいと決意をあらたにしている。本州最西端の長州、しかも下関という端っこではあるが、さいわいに情報は各地から様々かなり具体的なものが入手できる。
薬剤師という立場ながら、同じ薬剤師からの情報よりも、医師からストレートに情報が入ってくる境遇にも恵まれているので、信憑性の高い問断点を取上げることが可能である。
本サイトを開いてようやく半年を過ぎたばかりであるが、本年はブログ類との連係をさらに強めた新しい取り組みにも力を入れていけたらと愚考している。

白衣を脱いだらまたさようなら⇒●

 気になるブログでは、正月早々からこういうのが目に付きましたね。

医薬分業下における調剤専門薬局の現実

エビデンス漢方の危険性

 ところでネ、トップページでバナーリンクを貼っているブログ類をすべてヒゲ薬剤師がやっていると信じている人がいるんだから、ったく驚きますよ!

 逆に何人でやっているんだろうと、いろいろと数えてくれている人もいたりして。

 一説によれば、文体がそれぞれ異なるそうだ。
 
 じゃあ〜〜どれとどれがヒゲ薬剤師の専用ブログか、当ててミナ!


1月4日(水曜日)一般の方はこのサイトにしても、そのへんに貼ってあるブログ類などの漢方と漢方薬に関して、青天の霹靂の内容ばかりのように思われるらしく、世間一般の報道との違いに相当驚かれている人がおありのようではありますが・・・・・・

事実は小説より奇なりという言葉通り、この漢方世界においても、通説と事実はこれほどの隔たりがあるのですよ。田舎の一介の薬剤師風情に言葉が過ぎるのではないかと怪訝がる向きもおありのようですが、こう見えても過去、漢方および中医学専門各誌で喧々諤々の・・・・と書いたらますます胡散臭く思われるでしょうが、論より証拠、今後生きている限りは過去に認めた大量の拙論を小出しにしながら、漢方と漢方薬の真実を公開し続けるつもりですよ。

白衣を脱いだままのヒゲ薬剤師は一体?・・・⇒●

 もちろん過去の拙論ばかりにこだわっていると進歩はないので、その後の発展・解明してきたつもりの新たな総括なども小出しに公開していくつもりだが、何せ近年めっきり老化を感じて、チヌ釣りにも行かなくなっている始末。

 でも、今年の春は小手試しに乗っ込みのチヌでも釣って腕慣らしでもするかっという気がないでもない。

 同年代の人でも、人生はこれからだ!と頑張っている人も多いが、どうもね、もともとペシミステック?なところがあって、ショウペンハウエル的人生観も強く、その分、どうしても皮肉交じりのイヤミなジイサンになっていくばかりのようで・・・・・
ブログの私に影響を与えた良書・悪書・珍書・奇書・希書のね、このオッサンにも著書がある⇒「求道と創造の漢方」というところに書いてある内容を読むと、ったくトウヘンボクな自分にあきれ果てるんだけど、疾病観に関しては、それほど間違ってないと思いますよ。

 つまり、難治性の慢性疾患などは、8割治ればヨシとすべきで、たとえ一生付き合うことになっても、一病息災の考えで生きれば、2割残っている持病も、これがあるお陰で却って比較的元気で長生きできる縁(よすが)となるものだと考えますよ。

 事実、それを現実のものとされておられる多くの患者さん達を本業の上で目の当たりにする毎日ですからね。


1月9日(月曜日)昨年の11月19日の毎日新聞:東京朝刊の記事、ちょっと古い記事で恐縮だが、医薬品のネット通販問題である。これに漢方薬がどの程度関連するのか?
 但し、もともと医薬品である漢方薬もネット上での具体的なお誘い販売を自粛するように当局から強く促されていたはずだが・・・・・ともあれ上記の新聞記事を下欄に転載する↓

 医薬品:販売期間短い市販品、ネット販売認めず---厚労省検討会
 医薬品の販売制度を話し合う厚生労働省の検討会は18日、販売期間が短く、安全性評価が確立していない成分を含む市販薬のインターネット販売を認めないとの結論をまとめた。同省は来年の通常国会で関連法令を改正し、違反業者に営業停止などの行政処分を科す方針。旧厚生省通知は安全性の問題が少ないビタミン製剤などに限って通信販売を認めている。最近は通知対象外の医薬品をインターネットで販売する業者が増え、薬害被害者が「重大な薬害が再発するのでは」と取り締まり強化を求めていた。
 以上が毎日新聞平成17年11月19日東京朝刊の記事である。

遵法精神もここまで来るとイヤミかも、といわれている白衣を脱いだヒゲ薬剤師

 この記事が出された当時、逸早く関西の某漢方メーカーの情報筋からヒゲ薬剤師のもとにご連絡があり、わざわざ直接もって来て下さったのだった。

 ところが、貴重な資料として保存していたはずのものが、沢山の資料の中に紛れて、どこへ迷い込んだやらと困惑していた。

 というところで、お正月前に偶然Faxの機器の上に分厚く堆積していた書類の山から突然、ヒラヒラと舞い降りてきたのが、この新聞記事であった!


1月12日(木曜日)サプリメントは薬ではないから安心だという思い込みから、アトピー性皮膚炎を却って悪化させてやって来られた若い女性がいるが、彼女に言わせれば、友人の多くがサプリメントに頼っていると言う。
漢方薬も薬だから、薬ではないサプリメントのほうが安心だという論陣を張るのであった!
漢方と漢方薬のお陰で一時は軽快していた女性の言い分が上記の通りである。
漢方薬も医薬品だから恐い、という論法である。だからサプリメントのほうが安心だと、友人達もサプリメントを愛用することはあっても漢方薬を利用している人は誰もいない。
だから私も漢方薬が恐くなって、サプリメントに走ったのだという。
おまけにステロイド軟膏も恐いからと言って、医師に他の軟膏を出してもらうように依頼したところ、奨められたのが軟膏の免疫抑制剤。
この方には、これも却って刺激になって塗布する都度、ヒリヒリ感と熱感が生じて、ますます悪化させ、どうしようもなくなって再度ヒゲ薬剤師の薬局へ・・・・・・


 かといって、漢方薬を本気で続けて見ようという意欲に乏しい方には、説得してまで漢方を奨める意欲も出ないところだが、事情あって一通りの説得を試みたが、無力感が残るばかりだ。

 炎症が激しい間だけでも、軟膏の免疫抑制剤を中止して、まともなステロイド軟膏を貰ってくるように信頼できる皮膚科を御紹介しておいたが、このステロイド剤にしても正しい使用方法を守れば、決して恐いものではない

 それにしても、よく効いていた漢方薬まで廃止して、医薬品は恐いからという理由からサプリメントに走る現代の風潮には、まったく絶句する以外に何もいう気になれないのが本音である。

 どうぞ、お好きにして下さいませ。小生にはかかわりのないことで、というのが本音である。
 たまたま今回は事情があっての例外的に説得を試みたが何度も言うように、空しさだけがあとに残るばかり。

 いつもなら、説得してまで漢方薬を奨めるつもりはないから、どうぞご自由になさって下さいませ、と言ってお帰り頂くところである。

 今回は、例外中の例外、極めて稀なこと、慣れない事をするから余計に疲労感が千倍も溜まってしまった。


1月20日(金曜日)厚生労働省は通常国会に「薬事法改正案」を提出する予定だそうだ。この中には漢方製剤、つまり漢方薬も当然含まれる医薬品のインターネット通販の規制がかなり強まる可能性も高い模様!
 この規制にヒゲ薬剤師は賛成だが、また大多数の同業者も賛成なのであった!
 
 薬事法改正案によって医薬品である漢方製剤のネット通販が法的に規制されることに賛同する薬局は大多数のようである。
 反対されているのはネット通販を行っている人たちの一部だけのようだ。
 これまでネット通販を行っている薬局さんでも規制賛成に回っている人もいるくらいだ。
 本来、治療薬的な医薬品である漢方薬類は、対面販売によらなければ適切な選定やアドバイスが行えないという考えは、反論の余地ナシとされるのが、専門家の多くの意見でもある。
 また、対面販売によってせっかく適切な漢方処方を見つけて差し上げても、ネット販売に流れて行かれて困っているという、経営的な危機感からも多くの薬局さんのくすぶった不満があったのも事実である。
 ネット通販を行わない薬局さんのほうが遥かに多いのだから当然であろう。

白衣を脱いだ漢方と漢方薬のヒゲ薬剤師は???

 実際問題として、薬系の漢方業界内では、各研究会などの薬局・薬店の多くははHPを持たず、従って対面販売を主としているだけに、漢方薬を含めた医薬品のインターネット販売のやや逸脱した販売手法などに様々なクレームが飛び交い、メーカーサイドも厚生労働省の求める対面販売の趣旨を逸脱した振る舞いとして自粛を求めているのが、業界内の現実なのである。

 ところが、である。ちょっとこれらにやや水を差すようなことを言うが、漢方薬というものは、安易な選択によって購入したところで、そうは問屋がおろさない。
なかなかピントのあった方剤が得られるわけでもないのである。
 
 多品目・多種類の少量生産だけに、HPやブログ類を複数運営しながらも、ネット販売はまったく行わないヒゲ薬剤師の薬局でさえ、何種類もの漢方製剤類において、日本一!販売量を誇っているものが結構あるのであった。
 先日も中成薬専門メーカーさんが、そのことを報告に来てくれたほどだ。

 お問合せの10件に9件をお断りしているような漢方専門薬局で、どうしてこのような不思議な現象が生じるかと言えば、
 西洋医学治療でも困難で、真剣に漢方薬治療を求めてこられる患者さん達こそ、漢方薬を素人療法で選択したところで、あるいはネット販売などのお気軽な手段を通じて入手した漢方薬では、なかなかピントがあった漢方処方が得られないこと、
 折々に詳細綿密なご相談を経なければ、適切な漢方薬の配合が得られないことなどが体感として理解される方が、意外に多いからなのである。

 漢方製剤の世界は、多品目・多品種で少量生産ということから、相当に漢方に習熟していなければ・・・・と、やや手前味噌になってしまったが、
 見方によれば、西洋医学や薬学の習熟よりも遥かに難しい部分を持っているからだ。

 単なる病名治療が出来ないところに漢方薬の大いなる難しさがあるのだから、漢方薬の真の実力を発揮させるには、対面販売以外には、なかなか困難であるということなのである。

 たとえば、対面販売によっても適切な漢方処方を見つけるのに相当な苦労が要るのに、ましてやネット販売ではなおさら容易でないことは火を見るよりも明らかである。

 だから、個人的には、ネット販売をやりたい薬局さんは勝手にやらせとけばいいじゃん・・・というのが本音でもあるのだが、
 合わない人に安易な販売によって、トンデモナイ副作用が生じた場合のことを考えると、やはり薬業界の健全性を保つ上からも、賛成するわけにも行かないのであった。


1月25日(水曜日)1月12日の日録で嘆いたサプリメントと免疫抑制軟膏でアトピー性皮膚炎を悪化させた女性、ようやく漢方に本腰を入れる気になり、また、免疫抑制軟膏を中止してステロイド軟膏に切り替えた途端、どんどんよくなっているとの報告を得た!
 1月12日:サプリメントは薬ではないから安心だという思い込みから、アトピー性皮膚炎を却って悪化させてやって来られた若い女性がいるが、彼女に言わせれば、友人の多くがサプリメントに頼っていると言う。漢方薬も薬だから、薬ではないサプリメントのほうが安心だという論陣を張った女性のことである。
 ステロイド軟膏にしても、正しい塗り方をすれば滅多なことで副作用は出るものではなく、昔ほど恐がる時代ではない⇒●
 これに正しい漢方薬(医薬品)の使用により、順調な経過を辿って緩解した方は、これまで相当な人数に上るのであった。

白衣を脱いだ漢方と漢方薬のヒゲ薬剤師はまたプッツン?

 もちろん健康食品やサプリメントを全否定しているわけではない。
 ヒゲ薬剤師の薬局でも、日本人に絶対的に不足しがちなカルシウム補給のために、漢方でも用いる牡蠣殻を原料にした製品を奨励している。

 また、塩の専売制のために精製塩ばかりを摂取させられたために、「にがり」という栄養素として重要な微量ミネラル不足の時代が長く続いた。
 これをカバーするために無公害地区のインドネシア産の天然ニガリなどを奨励している。

 このように合理的に意味のあるものは、健康増進に大いに役立つことは間違いないのだから、内容によっては健康食品やサプリメント類でも奨励することもあるのである。

 また、漢方薬といえども、弁証論治を経ずに、たとえばアトピー性皮膚炎という病名だけを頼りに投与される安易な方法では、却って悪化することも稀ではないので、漢方薬なら何でもいい訳ではない。


2月1日(水曜日)「冷えるのが最もいけない、万病は冷えにある!」といった強引な論法がまかり通っている!
個別性を重視する漢方と漢方薬、つまり中医基礎理論からこれを眺めればとんでもない話で、これによる弊害が昨今、多く見られるようになって来たので、警鐘を鳴らしておく必要を感じるのである!

 もちろん「冷え」が原因で多くの疾患の引き金になっていることも事実だから、一部間違いではないが、温める療法を皆に適用して強引に普遍化しようという論法が間違っているのだ。
 猫も杓子もダイエットに走るのと類似した乱暴なブームであり、「冷えを取れば万病が治る」などとはトンデモナイ話だ!
 これのやり過ぎによる弊害が生じた実例を挙げればキリがない。
 中医学的に肺陰虚に肺熱を伴っている慢性気管支炎の男性が、奥様の強い勧めで良いと言われるあらゆる保温を心がけた結果、せっかく治まっていたCRPが一気に上昇し、眠っていた細菌が暴れだして高熱を発した例。
 冷え込むと決まって繰り返す膀胱炎にカイロまで当てて冷えを徹底的に取るのに治らない。冷えると必ず膀胱炎が悪化するので温める漢方薬を求めてこられた方に、温熱薬は一切出さずカイロも止めてもらい、「猪苓湯(ちょれいとう)」だけを連用半年でほぼ根治!
 ヘルペスが病院治療によって治らないからと、万病は冷えによるという強引な理論から附子の配合された漢方薬を長期連用して病はますますひどく、顔面も常に酒に酔った相貌が固定してしまうなどなど、原因と結果の因果関係を短絡的に考えるととんでもないことになる実例は五万とあるのだ!

白衣を脱いだ漢方と漢方薬のヒゲ薬剤師:『漢方の臨床』誌の「新年のことば」の投稿文の話
こちらは健康ブームの困った問題点の指摘(衆愚なんて言われてるぞ!)

 人間はそれぞれ性格や身長・体重・顔つきなど大いに異なるのだから、普遍化してよいものといけないものの区別をしっかりしておかなければ、とんでもないことになる!
 猫も杓子もダイエットというのと同類である。

 不必要に温めてはならない体質の人も多いことを知るべきなのだ。

 漢方界においても昨今、温補剤の乱用がやや目立ち始めているのは、これらの「ブーム」の影響だろうか?
温補の漢方処方の乱用が目立つ日本の現状 
 ここに書かれているように、

ここ十年以上、日本国中で暖房設備が行き届き、加えて温暖化の傾向著しい上に、食糧事情があまりにも豊かになり過ぎて、飽食の時代と言われて久しいのに、何ゆえに皆がみな「冷え」が問題と決め付けねばならないのか?

 上記の膀胱炎患者さんの問題にしても、たしかに冷えが膀胱炎の誘発因子になっているのは間違いないが、一旦膀胱炎を生じたからには既に温めても治るどころか、温めすぎることによって却って「炎症」をひどくさせ、ますます治りにくくしていたのだ。
 だから、弁証論治にもとづいて「猪苓湯(ちょれいとう)」単独で対処し、過度な保温になり過ぎるカイロも中止してもらったところ、速効を得ており、念のため半年間連用してもらったということである。

 但し、これとて皆がみな同様の解釈が成り立つと言える訳でもないのである。

 個別性を重視する中医学理論をもっともっと学ぶべきだ!


2月7日(火曜日)「親展」と記された封書で某漢方関係の研究会より、2006年2月3日付けで漢方薬類(医薬品)のインターネット販売中止の要請文書が送られてきた!
 これまでもファックスなどで厚生労働省の指導に従って、某研究会取り扱い医薬品のインターネット販売を中止するよう勧告されて来たが、今回は文書をもって郵送された強烈な要請であり、会の強い決意が表明されている!

ヒゲ薬剤師も所属する某中医薬系漢方研究会では、薬局・薬種商等1千以上の会員を擁する団体であるが、三十数店に上る会員店が、買い物かごやカート、あるいは注文表などの方式を用いて研究会取り扱い医薬品のインターネット販売を行っている。
 ネット上に研究会取り扱い漢方薬製剤の写真を掲示するなどして訪問者の選択のみで注文に誘導するお誘い販売である。
 これらの漢方薬類はれっきとした医薬品であり、一部の例外を除いて、消費者保護の目的から対面販売によって医薬品に関する情報(効能効果・副作用・使用上の注意など)を十分に伝達がなされるよう、厚生労働省医薬食品局から再三に渡り指導されて来たことであるのに、未だに遵守されない会員店が多数存在するとのことである。
 この文書でもっとも強く警告されていることは、厚生労働省の指導に反してネット販売を続けることから、予期せぬ副作用や誤用による事故が発生した時、その当事者はどのように弁明されるのか!と強く訴えられているのである。
 このことのために、消費者のみならず当研究会会員の多年の苦労と努力による信用を、一部の不届きな会員店のために信用を失墜させられてはなるものか!
という強い決意を持って、厚生労働省の再三に渡る通達を順守しない会員店に即刻、医薬品のインターネット販売を中止するように訴えかけている文書なのである。


 一部の不届きな会員店は、厚生労働省の指導通知を無視し続け、医薬品である漢方薬類を堂々とインターネットによるお誘い販売を引き続き行って中止する様子もみられなない。
 のみならず、今国会で医薬品のインターネット販売禁止の法制化をしないで欲しいとの陳情行動を行っている。
 厚顔無恥というほかは無い。
 さらにはHP上で消費者に広く意見を求めて利己的な窮状を訴えるネット販売薬局も出現する始末である。
 今回の「研究会取り扱い医薬品のインターネット販売中止の要請」書のみならず、厚生労働省の再三の通知を無視し続けることが出来るのかどうか?
 一部の利己的な会員店が、もしもの不祥事を起こした場合、消費者のみならず1千以上の会員店にどれだけの迷惑を及ぼすことになるのか、少しは想像力を働かせて欲しいものだ。
 その三十数店の会員店は、素直に厚生労働省の再三の通知に従うや否や?


2月15日(水曜日)またまた、アガリクス問題ですね!
 某大手企業の子会社で製造販売されていたアガリクスに発がん性があるとかで、日本薬剤師会のほうからもファックスで詳細な連絡が入って来ている。
 テレビなどの報道でも利用者が多かったらしく多少のパニックも生じかねない問題のようですね。
 当方の関連サイトでも「アガリクス問題と漢方」というタイトルで、「検証 免疫信仰は危ない! (代替医療取材チーム) 南々社」という素晴らしく真面目な書籍の、ヒゲ薬剤師による書評を一年以上前から掲載していますよ。
 実はタイトルだけは現時点に相応しいように「アガリクス問題と漢方」という風に変更したばかりですがね。
 昨年も、アガリクス信仰の強い方が、ご家族の末期癌に使用したいが教えて欲しいと、調査ばかりに熱心な方がおられた。
 当方ではアガリクスなるものは、信用してないので置いてないからと丁重にお断りするも、アガリクスも置いてない薬局なんてと、随分軽蔑的な態度をされたものだが、いやはや、日本全国には利用されていた方が相当に多いそうだから、今後の影響が懸念されますよね。

白衣を脱いだヒゲ薬剤師は⇒●


 食塩でさえ発がん性があることが証明されたり、多くの物質に発がん性があるものだ。

 Naclそのものは、生体を正常に保つ上では必要不可欠な物質ではあるが、摂り過ぎると発がん性があると言われる。

 今回のアガリクスは健康食品として派手な宣伝などにより加熱するブームに煽られて、各社競って製造発売して、昨今では相当大手の企業の関連会社でさえ参入して、相当な売り上げを競っていたようだ。

 ベータグルカンの含有量がどうのこうのというキャッチフレーズで、どのような根拠、あるいはどの程度の根拠によってこれだけのブームになったのか?

 発端は何年も前にS大学名誉教授・農学博士のM教授が『食べて治す「がん」の特効食』として前後2冊の本で、ブームを作ったのがきっかけである。

 その後、そのM教授は数年もしないうちに、みずからが胃がんとなり、あっという間に他界されたのだった。

 昨今、胃がんはよく治る癌の一つになっているほどなのに、アガリクスが癌の特効食のように宣伝された当の先生がこのような有様であった事実を誰も直視しなかったことが不思議である。

 事ほど左様のレベルのアガリクスなるものをS教授みずからが、かなりなデータの捏造を行っていたとかで、当時も相当な悪評がたったものであったが、なぜか懲りない面々が多く、今度は出版社ぐるみで事実無根の癌の治験例の本を何冊も乱発して御用となったのはつい昨年のことである。

 本当に懲りない面々が多いことですね〜〜、この日本国には・・・。
 金儲けの好材料と見ると、たとえイカガワシイモノでも、大手企業までが参入する日本社会ですからね。
 金儲けのためなら何でもやるというのが、あの建築業界が象徴するように、健康食品業界も大同小異とは言えませんかね〜!?

関連ブログ:アガリクスを置かない薬局として、やや変人扱いされて来たが


2月22日(水曜日)17〜18年前の『漢方の臨床』誌・36巻5号の「編集雑筆」(編集後記と同意)に編集者のT氏が次のように書かれていたのだった。

 京都の細野史郎先生がご逝去。漢方の御三家は、矢数道明理事長お一人となった。大塚・矢数・細野の三大家が開拓、発展させた昭和漢方は平成時代にどのような道をたどるのか。下関の論客・村田恭介氏は切れ味鋭く論説しておられるが、いろいろ議論もあろう。「純粋な学問上の批判」なら大いにやって頂きたい。


 このT氏の編集雑筆は、その五ヶ月前『漢方の臨床』誌:東亜医学協会創立50周年記念特集号に書いた拙論「日本漢方の将来「中医漢方薬学」の提唱」に対してコメントされたものである。

 当時から中医学か日本漢方かの問題はくすぶり続けたまま今日に至っているが、
拙論発表当時は日本古漢方派のH先生のお弟子さん達のグループが反論するかどうするかで相当議論になり、
結局は「無視」することに決定したとのことであった。

 実はそのグループに所属する医師が当方にその詳細を伝えられていたので、正面衝突の大論争になることを期待していたのだが、日本漢方の将来のために、惜しい機会を逃したものだと思うものである。

 今からでも遅くないから、中医学か日本漢方かの論争が起ればよいがと切に望むものである。


 学問の世界においては、先人の業績に畏敬と感謝の念を抱きながらも、批判精神を失くしてしまったら、そこでその学問の進歩は終わってしまう。

 先人の業績を顕彰しながらも、絶対的なものとして崇め奉るようなことにでもなれば、その学問は次第に腐敗して、悪臭が蔓延することになるだろう。

 吉益東洞・傷寒論・金匱要略など、崇め奉るに都合のよい対象が漢方界には無数にある。

 「批判的に継承」するという精神が無ければ、学問は腐敗するということだ。

 もちろん、中医学基礎理論に対しても、同じことが言える。

 深く精緻に学ぶ心構えも必要だが、いつまでも学ぶ・マネブだけであってはならない。

 進歩・発展のためには常に「批判的に継承」されなければならないのである。


3月2日(木曜日) 漢方薬「補中益気湯」で体力を温存できている癌転移による軽度の腹水の患者さんのメール相談に、補中益気湯と合わせると扶正袪邪のバランスのよい五苓散をアドバイスしていた。
 ところが「近所の漢方薬局の先生に相談してみましたら、五苓散は実証用だから癌性腹膜炎では違う、牛車腎気丸+人参養栄湯しかない、といわれ五苓散だけ買いにくくて、病院で処方してもらうようにした次第です」というお返事が帰ってきた。

 上記「五苓散は実証用」だからという概念そのものが根本的に間違っている。
 さらには邪を留め兼ねない「地黄」が含まれた漢方処方「牛車腎気丸」を癌性腹膜炎に奨める漢方薬局の知識と経験を大いに疑わざるを得ない。
 ところで、主治医に五苓散を相談したところ五苓散を出してくれたものの、これまで体力を温存してくれた肝腎な補中益気湯を中止させられたと言われるからこれまたタマゲテシマッタ!
(これ以上のメール相談は無理だから、早く地元でもっとましな漢方の専門家を見つけるようにアドバイスしていたが、ようやく見つかったようでホッとしている。)


 日本漢方には「扶正袪邪(ふせいきょじゃ)」という概念が無いから、五苓散を実証用などという錯誤した極め付けを行ってしまうのだろう。

 五苓散の薬味中には、明らかな袪邪薬である沢瀉(たくしゃ)は別にして、茯苓(ぶくりょう)・白朮(白朮)という補益作用のある成分が含まれている。
 また中医学派でも知らない人がいるかもしれないが猪苓(ちょれい)も補益作用を有している。
 したがって五苓散自体が扶正と袪邪を兼ね備えた方剤なのだ。
 それゆえ、何を根拠に実証用だから強すぎると言えるのか、理解に苦しむところである。

 しばしば癌性腹膜炎の超末期に使用して有効な場合の多い「補気建中湯(ほきけんちゅうとう)」にでさえ、黄芩(おうごん)や沢瀉・厚朴といった袪邪薬が含まれているのに、五苓散中に沢瀉が含まれるくらいで、日本流で言う実証用と決め付けるのはあきらかな錯誤である。

 日本漢方では、実証用は体力のある人にしか使えない方剤とし、虚証用は体力のない人に、そして虚実中間証の人には、体力の中くらいの人に用いる方剤であるなどと、ちょっと苦笑を禁じえない概念が主軸なのだから困ったものである。

 さらには、せっかく部分的には効果を発揮していた補中益気湯を廃止して、五苓散に切り替えられる主治医の判断も理解に苦しむところである。
 どうして、補中益気湯と五苓散を併用するという扶正袪邪の発想がわかないのだろうか?

 以上は、中医学においては基本中の基本の概念を説明したに過ぎない。

 かてて加えて、癌性腹膜炎に対する「牛車腎気丸+人参養栄湯」という発想そのものは、小生にはまったく理解に苦しむところで、青天の霹靂である。
 癌性腹膜炎が進行すると、悪心(おしん)や嘔吐を伴うことも多いのに、地黄剤などを考える漢方知識を疑わざるを得ない。


3月9日(木曜日) 現代の風邪やインフルエンザは漢方医学における代表的漢方薬方剤、葛根湯や麻黄湯などでは有効性がかなり乏しいことを強く認識すべき時が来た!
  つまり傷寒論医学では現代の風邪・インフルエンザに、実際に使用した現実的な問題として、明らかに有効性が乏しいということだ。『漢方と漢方薬は風邪・流感(インフルエンザ)に本当に有効か?』において、あらゆる角度から検証し続けている。

 マウスを使った実験で葛根湯がインフルエンザにいかに有効であるかを証明するテレビ番組2006年02月11日『NHK教育チャンネルの「サイエンスZERO」で放映された漢方薬のお話!』などがあるが、元気なマウスにインフルエンザを感染させて葛根湯を投与する実験による証明と、同じく元気なマウスにアガリクスを投与して発ガンするのとでは、意味合いが大きく異なる。
 もともと元気なマウスに無理やり感染させた疾患に対する有効性と、元気なマウスでも発ガンしたという両者の比較では、前者は割り引いて受け取る必要があり、後者の場合は全面的に信頼できるということですよ。
 ともあれ、日本の漢方関連の研究機関は、いまだに傷寒論・金匱要略の世界から一歩も出られないことに些かの疑問を禁じえない。
 中国の明〜清代にかけて急速に進歩・発達した温病学、たとえば『温病条弁』などの研究を行わないのだろうか?
 何と言っても、現代の風邪やインフルエンザの漢方薬は、銀翹散が主体であるべきだと思いますよ!

裏版白衣を脱いだ漢方と漢方薬のヒゲ薬剤師では、まったく漢方薬とは無関係なハナシ!

 清代の『温病条弁』などを日本漢方に取り入れることになれば、現在の漢方医学における基礎理論および専門用語をほとんどすべてを廃棄せざるを得なくなるだろう。

 『温病条弁』など明〜清代に急速に発達した温病学を取り入れるとなると、傷寒論に由来する六経弁証だけでは済まなくなる。

 三焦弁証・衛気営血弁証、臓腑弁証など多くが必要となり、これらを導入したら最後、「日本の伝統医学」といわれる漢方医学の基礎理論がすべて瓦解するということだ。

 インフルエンザにも十分に対処できる『温病条弁』である。急性疾患に対する高度な発達は、傷寒論医学の比ではない。

 うん〜〜〜、やっぱり漢方医学、すなわち日本漢方が頑なに中国清代の医学を避ける筈だ!

 これを取り入れたら最後、漢方医学の根底が大きく揺さぶられることになるのだから。

 しかしながら、日本漢方には基本方剤を大切にする優れた特長があり、傷寒論医学が模範を示した「異病同治」の世界こそが漢方医学の特長であったはずだ。だから、そこまで危惧しなくとも「異病同治」の世界の発展には大きく貢献できるはずである。

 その方法論としては、『漢方医学発展への道』などの考察がきっと参考になると思うのである。

 ともあれ、日本の漢方医学には以上のような大きな矛盾とジレンマを抱えていることは間違いないのである。


3月16日(木曜日)漢方と漢方薬を専門としたこのサイトを使って「温病条弁」を取り入れない日本漢方の問題点を指摘したり、葛根湯や麻黄湯などの傷寒論医学では現代の風邪やインフルエンザには非力であることなど、様々な問題点を指摘し訴え続けるのはなぜか?
 ほかでもない、我が愛する日本国の漢方医学の水準を、もっともっと高めて欲しいからである。
 単にへそ曲がりのイヤミ爺さんが意地悪で言っているのではない。
 すべてにおいてシッカリとした根拠を示しつつ発言しているつもりである。
 これでも舌鋒あるいは筆鋒の勢いは専門誌執筆時代よりも穏やかなくらいである。
 真の漢方と漢方薬の実力を発揮させるには、傷寒論医学や金匱要略ばかりを信奉していても進歩はない。エビデンス漢方然り。
 呉鞠通著『温病条弁』を無視し続ける日本漢方に明日はないかも知れないし、たとえ明日があろうとも漢方の真の実力を発揮できずに、単に西洋医学の補助療法レベルに堕するのみであろう。

白衣を脱いだ漢方と漢方薬のヒゲ薬剤師:14日のメモ

 実際問題として病院から出される医療用漢方で効果が見られなかった人の中には、病院でも漢方を使うのだから、それなら専門家のところで相談したほうがもっと良い漢方薬があるかもしれないということで、漢方薬局に訪れるきっかけとなった患者さんもいるのである。

 身内にいる医師を見ていても、本業の西洋医学による診療に忙殺され、あるいは若い医師は西洋医学における専門医の資格を得る勉強などにも時間を奪われ、なかなか漢方の勉強にまで時間が回らないのが現実のようである。

 少数、かなり漢方を勉強している医師でも、日本漢方やエビデンス的な漢方であるために、温病学にはまったく暗いことが多い。

 日本の漢方医学のために、日本の伝統医学といった空威張りに終わらない為にも、早急に温病学を取り入れ、もっともっと高度な漢方医学になって欲しいと思うが、身近な医師たちを見ていると、あまりにも多忙なために分っちゃいるけど時間がない、というのがやっぱり現実のようで、はたから見ているこちらの方がジレンマに陥る気分である。

 ということで老齢にさしかかる小生の後継者には薬剤師が後にいなくて医師ばかりの愚息・愚娘やその配偶者たちだから、日本漢方と中医学を合体させた「中医漢方薬学論:漢方医学発展への道」も風前の灯となりそうなのであった。


3月24日(金曜日) 個性的な漢方薬製剤が次第に消えていく。
 某社から長く製造されていた傷寒論や金匱要略の基本漢方処方を土台に生薬末を加えたり、茯苓・白朮を余分に加えたりしたとてもユニークな漢方製剤であったが今年から製造中止!
  それに代わって傷寒論や金匱要略に記載された通りの、どこの漢方メーカーでも製造されているありきたりな漢方エキス錠となってしまった!

 個性をのばすことが尊重される日本社会であるが、漢方薬の世界では個性的な漢方製剤がどんどん消えていく。
 中国古代の原処方のままの漢方製剤を金太郎飴のように各社が競って製造する意義がどこにあるのだろうか?
 これまでのように原処方を加減した個性的な方剤こそバリエーションが拡がって融通が利いていたのだが。
 たとえば、六味丸に肉桂が加えられただけの七味丸となった製剤、つまり八味丸から附子(ぶし)を除去した実に便利な製剤があったのだが、これも廃止して、単なる八味丸に改悪されてしまった。
 日本国内は、没個性の金太郎飴の漢方製剤ばかりが跋扈する時代に突入中なのである。
 実に嘆かわしい!


 どうしてこのような画一的・全体主義的な方向に向かっているのか、某社に釈明を求めても、まったく誠意ある回答は皆無。
 エキス錠関係はほぼすべて金太郎飴となったのでこの会社の製品を使わせてもらう意義がほぼなくなってしまったが、粉末製剤だけは従来のユニークな配合が存続するということだから、僅かに救われる部分がある。

 また、他社でも漢方エキス錠の製造・販売を完全に廃止してしまったところもある。この会社の釈明は単純明快「売り上げ不振」、はっきりしているだけ、気持ちがいい。

 漢方製剤も、弁証論治を無視した病名漢方が跋扈するなか、とうとう薬系漢方も末期症状を迎えんとするのか?

 このような閉塞状況の中にあって、中医学系の薬系研究会グループだけは、大いに頑張っているようで、僅かな救いが無いわけでもない。


3月31日(金曜日)漢方薬の製剤原料の中には牛黄(ごおう)・麝香(じゃこう)・熊胆(ゆうたん)などの高貴薬がある。
 麝香や熊胆についてはワシントン条約など問題があるので流通はかなり制限されているが ゴオウに関しては牛の胆石が漢方製剤原料となっているだけに、流通に特別な制限はないようだ。
 但し、高価なものだけに品質の良し悪しの鑑別が常に気になるところである。

 牛黄(ゴオウ)を主成分とする各社の漢方製剤の効能を見てみると、配合されている他の生薬(しょうやく)によって、「虚弱体質・疲労回復・病中病後など」を効能・効果とするものから、センソなどが配合されると「動悸・息切れ・気付けなど」が効能・効果と記載されている。
 牛の胆石部分を薬用とされることに狂牛病との関連を心配する方も稀にはおられるかもしれないが、その心配は無いので安心である。
 ところで昨今、自分自身がこの牛黄のおかげで体力・気力をなんとか保持出来ていることに感謝しているのであった。


 ゴオウの品質問題こそは一番気になるところで、大事なのはここからである。

 産地にしても、特に日本に流通しているものにはオーストラリア産・アルゼンチン産・ブラジル産・インド産?などがあり、品質が優れていると言われるのも、この順番である。

 ところが以前、こんなことがあった。
 某社のブラジル産を使用されている牛黄製剤がロット毎に効能に明らかな優劣が出てしまうのである。
 このロット毎に効能に歴然とした差が出るのを発見したのは自分自身の身体である。昼夜を問わないチヌ釣りに凝っていた頃で、体力を維持するためにその某社の牛黄製剤を常用していて、服用する都度、明らかに極端な疲労が回復するのを感じていたものが、ぜんぜん、本当にまったく効き目を奏さなくなったのだった。
 そこで直ぐに疑ったのがゴオウの品質問題である。
 早速、そのメーカーに苦情を言ったところ、真剣に受け止めてくれ、まずは各ロット毎の製品を小生が服用して体感による選別を行った。
 その中に二つくらいのロットでは全く無効であり、有効なロットであっても優劣の差を判然と感じるので、ロット毎に効能の優劣に順位を付けて報告した。
 その順位と各ロット毎に使用している牛黄に含有するビリルビン値を比較したところ、驚くべきことに効果が良い順に含有ビリルビン値も高く、30以下では無効であるとの結果である。

 この小生の鑑別をもとに、その会社では今後はビリルビン値が30を下回る製品は作らないことを約束された。


 このように、牛黄の産地も気になるところであるが、産地の問題以上に含有ビリルビン値に左右される可能性が高いのである。

 ところで、よく考えたら既に平成17年9月16日において、類似した内容を既に書いているのだった!
 まったく、老いの繰言ですね〜〜〜、我ながらイヤになる(シュンっ↓)